Denali's Room 一語一絵

旅と猫とあんことスイカを愛する絵描き、デナリこと大野舞が日々をつづっています。

2011年07月

マチュピチュ

すごく古い絵なのだけれど、初個展でひっそりと飾っただけなので再び。
ふとマチュピチュを思い出して。

行けるところには全て行ってみたい
やれることは全部やってみたい
会えるひとにはみんな会ってみたい
だって今しかない、今日しかない

と常に思っていることは、終わりがないから疲れる。けれど同時にだいじなエンジンだとも思う。ずっとアクセル全開にしておくのは無理でも、少なくとも好奇心はアイドリング状態にしておいて、いつでも発進させたいと思う。エンジン切ったら一気に「なんでもいい、どうでもいい」になって、再びキーを差し込んでエンジンかけることすらどうでもよくなってしまう。

欲張って走り続けるのは体力がいるけれど、見た事のないような景色や、ハッとするような一言や、知らない世界を知るときの興奮はアドレナリン出すし、ひとつ目的地に到着してもすぐに次の目的地を設定したくなる。「全て」なんてただの幻想なんだけれど、でもあとちょっと、もうすこし、あの丘の先まで、って。丘の先には99.9%これまでと同じ道が続いているのだけれど、もしかしたら、何か考えもしない景色が広がっているかもしれないって。
鼻の先ににんじんぶら下げられて走っている馬とおんなじだ。にんじんは決して食べられない、でもきっと目の前のおいしそうなにんじんを追いかけている馬は楽しいはずなんだ。それを食べたときの幸福感や、その美味しさを味わっている自分を、想像して目いっぱいワクワクしているはずなんだ。

書泉2011

また今年も、伝統ある書泉さんのしおり8種類をデザインさせていただきました。嬉しい限りです。本屋さんで本を1冊買うごとにランダムでしおりが1枚もらえるというしくみです。
最初が2007年「世界の旅バージョン」、翌年2008年の「どうぶつもよう」シリーズに続き、今回が3回目です。

今回はちょっと今までと違うことをやってみたかったので、8枚全部つなげると1枚の世界になる、というパズルバージョンにしてみました。どういう絵になるのか、集めてみてください!と書いてここに載せるのをやめようかと思いましたが、1枚絵バージョンはここでしか見られないということで・・・先に答えを載せてしまいました。だからすごく縦長の絵になっています。

8枚集めるのって意外に難しいかも・・。毎回ちゃんと違うものがもらえるとは限らないし。
でも楽しみながら、是非パズルを作ってみてください♪

sora

昨日たまたま幼稚園から高校1年まで住んだ懐かしい町に久しぶりに行ったので、アラスカに引き続き心が遠くまで飛んでいった。懐かしい場所を久しぶりに訪れた時に湧き上がる感情、は、懐かしい場所を久しぶりに訪れた時にしか湧き上がらない。
場所は、口を指でイーって左右に開いて「金沢文庫って言ってみて」のあの小学生男子的自虐ギャグで有名(?)な金沢文庫です。ちなみに。あれ、まだやる子どもはいるんだろうか。

駅前の「ユニー」は「アピタ」という名前になってて、あとは立派なツタヤが出来てたりしたけど、びっくりするくらい何も変わっていなくて、よくここのミスドでお茶したなあ、とか、ユニーの中の「すがきやすーちゃん」に買い物ついでに連れて行ってもらうのがすごく楽しみだったなあ、とか、父親がたまに駅にある31アイスをお土産に買ってきてくれたなあ、とかいろいろ思い出した。今アピタの中を歩いてみたら、私一体ここで何が欲しいと思ってたんだろう、と思う微妙すぎる品揃えだったけれど(笑)小さい時の私にとっては洋服もお菓子もおもちゃも、もう夢のように欲しいものがたくさんある、遊園地みたいな場所だったのだ。母が「ユニーに買い物に行くけど一緒に来る?」と小学生の私と妹に尋ねる時、私たち2人はいつも「いく!!」と部屋から飛び出していった。

きっと誰にだってある、懐かしい土地、懐かしい場所、懐かしい人。

そんな場所を訪れることは、自分の中にある博物館を一人でゆっくりたずねるみたいだと思う。今はもう現実には存在しない(存在している場合も、変化している)思い出や場所や人が、時代ごとに記憶の中で整理されて並んでいる。普段は都合よく抽出して編集した物語だけを思い出しているのが、実際にその場所に行くと忘れていた記憶も呼び起こされて、博物館のシアタールームの中にいるように映像が再生される。
それは確かに現実にあったことなんだけれど、自分は確かにその延長線上に作られているのだけれど、長い時間が経ってしまうとそのリニアな繋がりに確信がもてなくなって、まるで他人の人生のようにさえ思われる。展示されているものと見る主体の間に客観性がある。時間は、楽しかったことも、苦しかったことも全部「○○期」として展示物に変化させる。そんな心の中の博物館。行く必要は別にないところなんだけれど、たまに入って出てくるとちょっと日常の遠近感が変わっている。
人が「昔」を「昔」として認識するのにどのくらいの時間が必要なのだろう?「懐かしい」という感情は、どこから来るんだろう?

子どもの頃の自分にとって「大きくて、絶対で、無限」だったものって、大人になってから見るとだいたいほとんどが「小さくて、脆弱で、有限」だ。それでも、あれ、こんなだったっけ、とがっかりしたりはしない。逆にそのことをより愛しく思う。何にでも無限を感じられていた昔も、そこには果てがあるということが分かる今も。

Feellove

お世話になっている祥伝社さんの文芸誌「FeelLove」の最新号の特集は、「2011.3.11~そして、今わたしが思うこと~」そのタイトルの通り、いろいろな方が震災に関しての気持ちを綴っています。私も光栄にも声をかけて頂いて、絵とコラムを描かせて頂きました。その上すごい方々が寄稿されている中でまさかのトップバッター・・・!開くたびに動悸が激しくなります・・・。本当にありがたいです。

以前ブログに書いた「おじいちゃんの古時計」について、もう一度書きました。実感を伴わない情報が洪水のように流れ込んでくる中で、その時の私にとってとても実感を伴っていた出来事でした。書いたのは4月だったので、石巻にボランティアにいく前。今同じ依頼を受けたとしたら、きっと全然違うことを書くだろうなと思います。

「今、わたしが思うこと」の「今」。それは刻一刻と変わるもので、それに伴って「リアル」も変わっていく。日々変わるものだからこそ、「今」を記録することに意味があるんだろうなと思います。「その時」何を思ったか、「今」何を思っているか。いろいろな作家さんの千差万別の言葉に触れることが出来て、本当に今しか出せない、すごい号だなあと思います。私もその一部に参加することが出来てこんな風に「その時の今」を形に残すことが出来て、とてもうれしいです。是非、お手にとってみてくださいませ!

juneau

旅も終わりです。ジュノーを満喫しています。

この町は小さいので(州都なのに!)数日歩くだけで私みたいな方向音痴でも地図が体に入ってきます。お気に入りのカフェ(Silverbow Bakery)も見つけて、毎日のようにコーヒーを飲みにきています。ここのベーグルが絶品!
silver

アラスカのカフェでこのクオリティと雰囲気は本当に貴重であった・・・すっぱくてお野菜ごろごろなスープも美味しかった。下北沢に欲しいなあ~!

何度も書いている星野さんの本「旅をする木」に出てくる古本屋さん「オブザーバトリィ」にも行きました。本に出てくる通りの入り口で居眠りしている老犬と、本に出てくる以上に博識でおしゃべりが大好きな女主人デイィと話し込んで、イヌイットアートの本を1冊買いました。星野さんの話をたくさん聞けて嬉しかったなあ。

observatory

フランクリン坂の上に建つ、とても雰囲気ある建物。ディィの許可を得たので写真載せちゃいます。

whale

遠くで潮を吹いている20頭くらいのクジラ。こういうときはでも、カメラをのぞいてないで自分の目でみなくてはね。ということであまり写真が撮れず。

昨日はホエールウォッチングに参加したのですが、たくさんのシャチやトドたちに加え、これでもか!というくらいザトウクジラを見ました。人生でこんなにクジラを一度に見られる日が来ようとは。夏だけしか見られない「バブルネットフィーディング」という群れでの行動を間近で見ることが出来て鳥肌が立ちました。中でも感動したのは彼らの歌声。水中の音が聞ける機会が船に積んであったのですが、彼らは本当に常に声をかけあっていて、その歌声はとても神秘的。そしてその声が、みんなでタイミングを合わせて一気に水面に上昇する時に、明らかに変わるのです。音頭をとっているリーダークジラに合わせて、それまでは低くゆっくりだった彼らの声が「さあ、みんないくよ!」という甲高いリーダーの声に合わせて、だんだんと高く、早くなっていきます。そしてその速度と高さが最高に達した時に、十数頭のクジラたちが一気に水面に、口をがばーっとあけて出てきて、泡包囲網で追い込んだ魚を食べます。その迫力たるやもう・・。彼らにとってアラスカはキッチン。ハワイがベッドルーム。なんというスケール。そのあとも水面にジャンプしたり尾をフリップしたりのザトウクジラたちのショーが繰り広げられた。あんな大きくて偉大な生き物が同じ時間を生きているなんて、地球に来てよかった!!!今回はグリズリーにも遭遇したし、野生な旅だったな。しかしたまたま旅の間に読もうと持って来た本が村上龍の「歌うクジラ」だったことがまたシンクロです。

hana

今日は最終日なのでトラムに乗って、ジュノーの山に登ってみました。ハイキングトレイルがあるというので行ってみたら、やはりここはアラスカ、なめちゃいけない・・。簡単に一周出来そうと思って足を踏み入れたら、相当本格的な山登りをしてしまった・・。でも、風景が素晴らしかった。誰もいなくて空は綺麗で、遠くに雪解けで出来た滝の音が聞こえて、風は気持ち良くて、野の花がたくさん咲いていて、天国かと思った。谷の向こうの方で何か黒いものが動いていると思ったら、ブラックベアの親子だった。たくさんなっているベリーを食べるためかな。子グマが坂を登ろうとして、足を滑らせてゴロゴロ転がっていったのがおもしろかった・・。遠くにいればかわいい、クマ。満足して帰る時にふと道端の立て札をみたら「この先未舗装、落ちたり死んだりした事故あり。行くのは自分の判断で」みたいな立て札。行きがけにスルーしていたのだ!私は途中から観光用のハイキングトレイルをすっかり外れていたのです・・。通りで、わさわさと植物をかき分けないと進めない道なんて変じゃないかと思ったよ。あぶないあぶない。

raven

森の中の木にふいに現れるワタリガラス。

さあ、帰ろう。アラスカの空気をたくさん充電したから、また頑張れそう。ダウンジャケットとホッカイロが欲しかった旅から、覚悟して猛暑の中に戻るぞえ。極端だ。

hyouga2

今日はいい天気!山の上にかかる霧が晴れて清々しい。青い空はどこまでも広く、花が咲き乱れてとても綺麗。昨日は夕方に到着したのだが雨降りで暗い上に大きなRaven(ワタリガラス)が街中を飛び回っているので、微妙に墓場みたいだったのだ・・・
バスに乗って、メンデンホール氷河へ。街中から15分バスに乗るだけで、そこに最後の氷河期の名残を見ることができる。青く輝く氷の巨大な河にはひたすら圧倒される。氷の中には、人間が想像したしたこともないような風景がたくさん記憶されているんだろうな。
トレイルを歩いて氷河のすぐ近くまで行けたので、足元の岸に打ち寄せる水(文字通りの氷水!)を口に含んでみたら、冷たくて美味しくて、古代の味がする気がした。河だから淡水なのだ。
宇宙、地球、自然。悠久の流れを前にするといつも人間の小ささを実感するけれど、どんな永遠もそれを永遠として知覚する存在がいるからこそなんだと思うと、結局全部同じひとつのもののように思えるのです。

hyouga

氷河のすぐ側まで行けるのですが、傍らのこの滝の迫力もすごかった。

MOMROLL

昨日はEagle River最後の日だったので、Momと2人でネクタリンとアメリカンチェリーをどっさり買ってきてクラフティを焼いたり、私のリクエストで自家製ロールパンのレシピを今一度教えてもらって一緒に作ったりした。パン生地をつまんで丸める時、17歳の自分が今の自分にホログラムみたいに重なって、パンとデザートの焼けるいい匂いの中で懐かしい気持ちになった。
昔もよく一緒にこうやって料理した。まだ学校に馴染めなかったころ、放課後もすることもないし友達もいなくて、いつもMomのあとにくっついてばかりいた時は特に。
何時の間にか私も家にいるより友達と遊んでいる時間の方が長くなって、ゆっくり一緒に料理をすることも最初の頃より減っていったけれど、それでも夜家に帰ってドアをあけた時焼けるパンの匂いがふわっと漂ってくると、すごく守られている気持ちになった。変わらない味が嬉しくて、3つも食べちゃった。

みんなありがとう。別れは毎度泣ける。次に会えるのはいつだろう。星野道夫さんの「旅をする木」の中での大好きな一文。星野さんの友人が、アラスカに移住したばかりの星野さんの奥さんに向けた言葉。

「いいかい、ナオコ。これがぼくの短いアドバイスだよ。寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ。」
アラスカにいるとこの言葉が実感を持って体に染み込んできて、何よりも力をくれる。
また当たり前みたいに、「ただいま!」って帰ってこよう。


甘~いネクタリンとチェリーたっぷりのクラフティ。カロリーのことを考えず、アツアツのところを更に上にバニラアイスをのっけて頂きました♪美味~!


ということで、家族のために一昨日は焼きそばをつくりました。もはや野菜多めの焼きそばというより焼きそば入りサラダに…。そもそも「これを使って」と渡された麺が冷凍のぼそぼその麺だったし、所謂やきそばのソースもなかったので別のソースで代用して、頑張っても大満足の味というわけにはいかなかったのですが、それでもみんなに美味しいと喜んでもらえたから、良しとしよう。
しかし私にとってはこれでもかという濃い味つけにしたのに、彼らはそれでも「ちょっと味が薄めね」とかいって更にTERIYAKIソースをダバタバかけるのであった・・!


今がまさに旬のキングサーモン。シンプルな野生の味でうまし!アラスカは海の幸が本当に素晴らしい。素材そのままを味わってちゃんと美味しいのが救いだ。ベイクドポテトも本場だ!
しかし、アラスカと言えどやはりアメリカ。客観的に見るアメリカ的食生活は、どこか根本的に間違っているというか歪みを感じる事も多いのです。食べたいだけ食べながら山盛りのダイエットサプリメント飲むような。旅をしていて、食が楽しみのメインに来ないのは私にしたらめずらしい(笑)!あんな小さいうちからコーラばかり飲んで、ピーナッツバタージェリーサンドイッチや、ピザやハンバーガーや、変な色のケーキや、揚げパンにチーズと唐揚げを挟んだようなものばかり大量に食べてちゃいかんよ。。。野菜食べないし。デザートは毎食きっちりだし。みんな好き嫌い多いし。
もちろん州や思想や職業やいろんな要素がアメリカにはあるし、ベジタリアンの人も多いし、あくまでこれまで私が見てきた範囲でということだけれど。アメリカが世界一の肥満大国であることは事実だからにゃー。アラスカでは素材はこんなに豊富なのに、もったいないな。かくいう私も留学中には10キロ近く増えました。。。

明日は私が家族のリクエストで何故か焼きそばを作ることになりました。これでもかっていうくらい野菜いれちゃる!

valdez

東京は暑いのだろうか。。こちらは真冬の寒さ!7月なのに息が白くて、今いるヴァルディズでは遠くに氷河が見えます。
寒い中外でBBQをしたり、ストーンサークル作りを手伝ったり、キングサーモンを食べたり、アラスカらしさを満喫した週末でした。

ここにはなんにもないけれど、何でもあるなあ、と思う。私が普段何でもあるなあ、と思っている世界には本当には何があるんだろう。

夕食を食べた後に、じゃあちょっとクマでも探しにいこうかってドライブできるなんて、なんて贅沢なんだろう。

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