img20050311.jpgなんて淡々と絶望を語るのだろう、と思う。
何気ない日常の言葉に安心していると、気が付いたら真っ暗闇に引きずり込まれていそうだ。「僕の中の壊れていない部分」の方が洗練されている印象を受けたけれど、このデビュー作も頭に残ります。

文体は全然違うのに、この人の文章は何故か村上春樹の文章に似ているといつも思う。喪失感と絶望、それから光と。村上春樹が描く「井戸」というモチーフが似ていると思うからかな。
「ねじまき鳥クロニクル」の中で深い井戸の闇の底から空を見上げて、一日の中で一瞬だけ上から井戸の底まで差し込んでくる強烈な光を感じる場面がある。そのたった数秒間の明るさを待つことが人生の意味であり、全てと悟るような感覚。それがこの「一瞬の光」で描かれているものにすごく似ているように思いました。

途中引用されている文章にこんなのがある。

「<生の最中、我々は死のなかにいる。誕生の瞬間から常に人間は、いつ死ぬか分からない可能性がある。そして、その可能性は必然的に遅かれ早かれ既成事実になる。理想的には全ての人間が人生の一瞬一瞬を、次の瞬間が最後の瞬間となるかのように生きなければならない>
次の瞬間が最後の瞬間であるのなら、どの瞬間も光り輝く至上の瞬間なのだ」

分厚い物語だけど
この最後の一行が私はなんだか一番伝えたい言葉なんじゃないかと勝手に思いました。
本当にそうだ。その一瞬の光の連続の中を生きられればいい。
そこには意味なんか、きっとなくていいんだ。