「雪かき」 (Written by ゆうきマン)

 実は僕には結婚を約束した許婚がいる。
僕と彼女は、おもちゃ箱みたいに小さなぼろ家の、そのまた小さなベッドに二人で住んでいる。冬の寒い朝になると、彼女は両足をばたばたさせて僕をベッドから追い出す。「雪かきをしておくのよ」という合図だ。
僕が雪かきをしないと、僕らは家に閉じ込められて、彼女は大好きなショッピングに行けなくなるのだ。だから僕は毎日せっせと雪かきをすることになっている。
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 ある朝僕がいつものように家からたたき出されてスコップを手に外に出てみると、家の外に50メートルはあろうかという雪の壁がそびえ立っていた。
僕は、雪かきをするのもバカらしくなってしまってスコップを放り出し、手で雪に穴を掘り始めた。穴は次第に奥へ奥へと長細くなっていき、僕は気づくとトンネルを掘っていた。トンネルは、僕の手でどんどん深くなっていき、やがてくねくねぐるぐる回転を始めて、ちょうど16回転したところで僕は突然外に出た。
 そこはモミの木々に囲まれた雪世界で、僕の家よりもずっと小さな家がぽちぽちと並んでいた。
そこに住んでいたのは背丈が僕の膝までしかないたくさんの小人たちで、せっせとそりを磨いたり、おもちゃにニスを塗ったりせわしなく動き回っていた。小人たちは僕に気づき、全員が僕のところにやってきた。僕は逃げようと思ったけどもうすでに遅かった。
小人たちは僕をゴムでできたヘビ人形で縛りつけ、やんややんやとばかりに僕を町のほうへと運んで行った。小人は、「女王のところに連れて行くよ。」と言った。「おもちゃも女王にあげるのかい?」と僕が冗談を言うと、意外にも小人は「うん。」と答えた。
子供たちにあげるプレゼントだと思っていた僕は少しがっかりした。
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