こんにちは。皆様お元気でお過ごしでしょうか。私は元気です。カナリア諸島を過ぎたあたりで何が悪かったのかものすごく体調を崩し、使い物にならない日が2、3日ありましたがやっと回復しました。ふう。
明後日のジャマイカ到着に向けて日々どこまでも蒼く深い大西洋を眼下に眺めて 比較的のんびりと過ごしています。
飛び込む衝動を抑えるのが大変なほどの透き通った海。
長いと思われた大西洋ですが、洋上大運動会があったり、文化祭があったり、講義を受けたり、本を読んだり、プールやジャグジーでふやけたりしていたら
本当に、あっという間。世代も出身地も違う人達との交流はとてもおもしろいものです。
昨日という日はとても特別に始まりました。朝6時半に起き、朝日を見に甲板に上がりそしてパステルカラーのグラデーションに霞む彼方の水平線から上ってきたのは齧られたように大きく欠けた太陽。大規模な日食です。チェシャ猫の口型の真っ赤に燃える大きな太陽がゆっくりゆっくりと空を明るく染めてゆく様は声が出ないほど神秘的で雲に隠れてしまうまでずっと眺めていた。
その後も今日は一日不思議なほど海が凪いでいて、ベルベットの絨毯のようでした。

それから、場所柄もあって昨日は船内で「タイタニックディナー」なるものが催されました。
たまに正装をしてディナーを楽しむフォーマルディナーイベントがあるのですが、昨日はタイタニック号の姉妹船であるオリンピック号と同じメニューのディナーが出るという日だったのです。
(タイタニック号のメニューは、沈んでしまったために記録に残っていないそうです。でも姉妹船で同じ航路の船のメニューなので、ほぼ再現だとのこと)鶏卵のゼリー寄せキャビア沿え、オマール海老のテルミドールマッシュポテト添え、などおいしかった・・・。地中海を越えてから海産物がベリーナイス。
同時に部屋のテレビでは「タイタニック」が上映されていたのでつい見てしまったのですが、あの映画を、実際に船が沈んだ大西洋で、作られてから50年の年季の入った船の最下層のキャビン(つまり海の底)の波でギッシギッシ音がするベッドの上で見るというのはオツといっていいのか悪趣味と言うべきか 何にせよスリリングな体験でした。その後デッキで夕焼けを見ていたらジャックが”I’m the king of the world!”と叫んだのも納得できる、これまた神話的に美しい空。贅沢な時間だ。
夕日が、水面にまるで長く伸びる1本の大きな道のような光を映し出します。
海の上に作られたその道を、光に向かってまっすぐ進んでゆく船。
大西洋、この海を、これまでどれだけ多くの人々が 夢を求めて、新たな人生を求めて、あるいは何かから逃げるために、渡ってきたんだろう、と思わずにはいられない。コロンブスも、清教徒も、多くの移民たちも、タイタニック号も、こんな風に夕日や朝日を見つめながらまだ見えないアメリカ大陸を目指してたに違いない。
私が今いるこの海、このはじける波の泡を見ていると そんな数え切れないほどの想いがこの深い海の底に沈んでいる気がします。日本に住んでいると、例え飛行機でもほとんど大西洋を越えることがないからあまりこんな風に考えたことはなかったな。

時間は加速度的に、半ば強引に、しかし公平に平等に、一刻一刻流れていっています。無事にジャマイカについたらまたご報告します!