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旅が好きと常日ごろから言っている私ですが、旅人のバイブル、沢木耕太郎さんの「深夜特急」をしっかり読んだのって実は最近です。そしてもっと早くにその本に出会っていれば良かったと(正確には、出会っていたし開いてもいたのに、なんかその時はちゃんと読めなかった)後悔したのでした。そう思う人はたくさんたくさんいるんだろうけれど・・。

そして最近続編というのとはちょっと違うのだけれど、「旅する力-深夜特急ノート-」という深夜特急にまつわるいろいろなエピソードがまとめられた本が出たのです。今度は通勤快速なみの速度で読破!バックグラウンドや本に書かれていなかったさまざまなエピソードがたくさん紹介されていて、本編を読んでいる時のワクワクをまた思い出しました。
ただ旅そのものの本というよりは旅について書かれた本、だったので、あの本編を読み進めていた時の興奮とスリル、まさに一緒に旅をしているかのようなスピード感はなくて、「そうだったのか~」という冷静なテンションで読むようなものだったので「最終便」という名前がふさわしいのかどうか、はよく分かりません。それでも多くの学びがあり、中でも沢木さんが「旅」というものについて締めくくった、本の最後の一段落の言葉が、心の中でずーんと印象に残った。

ので、以下引用します。
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もしもあなたが旅をしようかどうしようか迷っているとすれば
私はたぶんこう言うでしょう。
「恐れずに」それと同時にこう付け加えるはずです。「しかし、気をつけて」

異国はもちろんのこと、自国においてさえ、未知の土地というのは危険なものです。
全く予期しない落とし穴がそこここにあります。
しかし、旅の危険を察知する能力も、旅をする途中でしか身につかないものなのです。
旅は、自分が人間としていかに小さいかを教えてくれる場であるとともに、大きくなるための力をつけてくれる場でもあるのです。つまり、旅はもうひとつの学校でもあるのです。
入るのも自由なら出るのも自由な学校。大きなものを得ることも出来るが失うこともある学校。
教師は世界中の人々であり、教室は世界そのものであるという学校。
もし、いま、あなたがそうした学校としての旅に出ようとしているのなら、
もうひとつ言葉を贈りたいと思います。

「旅に教科書はない。教科書を作るのはあなたなのだ」と。

私が旅という学校で学んだことがあるとすれば、それは自分の無力さを自覚するようになったということだったかもしれない。
もし、旅に出なかったら、私は自分の無力さについてずいぶん鈍感になっていたような気がする。
旅に出て手に入れたのは「無力さの感覚」だったと言ってもいいくらいかもしれない。

いま、私は自分がいかに無力かを知っている。
できることはほんのわずかしかないということを知っている。
しかし、だからといって、無力であることを嘆いてはいない。
あるいは、無力だからといって諦めてもいない。
無力であると自覚しつつ、まだ何か得体の知れないものと格闘している。
無力な自分が悪戦苦闘しているところを、他人のようにどこかから眺めると、少しばかりいじらしくなってきたりもする。
おいおい、そんなに頑張らなくてもいいものを、と。
しかし、そのように頑張ることができるのも、もしかしたら自分の無力さを深く自覚しているからかもしれないのだ。そこからエネルギーが湧いてくるからかもしれないのだ。

私が旅という学校で学んだのは、確かに自分は無力だということだった。

しかし、それは、新たな旅をしようという意欲を奪うものにはならなかったのだ。

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貧困なボキャブラリでどう表現していいか分からないけれど
本当に、本当にその通りだと思う。

そして、ここで言われている旅はいわゆる「旅」という以上に大きなものを持っている。始まりがあれば、終わりがある。よく言われるけれど人の一生もまた「旅」に他ならないのだから、この「旅する力」という言葉は言い換えれば「生きる力」であり、人生そのものが学校のようなものだということだと思います。つまりこの最後の一文は生きることそのものについてだと、私は受け止めました。

私なんて無力以上に無力です。
それでも入学してしまったからには、この旅という学校の中で、勉強頑張ったり、泣いたり落ち込んだり、0点とったり100点取ったり、廊下に立たされたり、イベントがあったり、恋愛したり、落とし穴に落ちても這い上がって、友達と笑いながら、何事からも目をそらさず、省略せず、もがきながら成長してゆくしかないのです。
いつか胸を張って卒業証書を受け取れるように。

人も本も作品も、出会えてよかったと思えるものとの出会いは本当に奇跡だ。
はやすぎる、も、おそすぎた、も、出会わなければよかった、も、ない。とにかく出会った、ただそれだけのことで人生はこんなにもしっとりとするのです。旅に教科書はないけれど、そういう意味では「全ての出会いが人生の教科書」なんだろうな。

よし、旅に出よう!
この世界はまだまだ分からないことばかり。
分かっているのは、分かっていないということだけ。