
深く濃く、夜の海のような蒼色。
石はどれも不思議な魅力を持っています。
強く主張するわけでなく決して媚びることなく
けれどひたひたと静かに訴えかける
「あなただけのものになってあげてもいいのよ」と。
旅の宝石売りから買ったこのお姫様は
私の耳元で軽くゆれながら
まるでそこが自分の玉座のように
傲慢に、しかし美しく輝き
自分を作り出した主人のことを
いつか彼女を愛でた王のことを
大女優のお気に入りだったことを
高価なケースにしまわれていたことを
誇らしげに語り続ける
文句が多いわりには今の居場所に
それほど不満そうな様子もなく
どうやらここに居座ることに決めたようです