
村上春樹を読むに限ります。彼の描く世界に入っていくと 都会の喧騒の中でも深い井戸の底に潜って 心地よい闇に浸ることができるからです。
そんなわけで4回目くらいに「スプートニクの恋人」を読みました。こうして繰り返し何度も読みたくなる物語はほんとに少ない。多分、もう内容云々じゃなくて、単にその「世界」に行きたいだけなんだと思います。ジブリの映画と同じ。でも何度読んでもその度に違う発見があって、今回も本当にじっくり楽しめた。
絵は、私がイメージする「ミュウ」です。半分になってしまった、失われた影。そして「あちら側」にいる、黒髪のもう半分。
村上春樹の作品の中で「あちら側」と「こちら側」は繰り返し出てくるテーマだけれど、「スプートニクの恋人」がたとえば「象の消滅」や「世界の終わり」と決定的に違うのは、最後にちゃんとその2つをつなぐ橋がかかって 失われたものが戻ってくるという「救い」があるということ。なので、珍しく、とても心温かな気持ちで本を閉じることができる。
最初に読んだときに違和感を感じたのはまさにその部分で、そのときはあまり良いと思えなかったのだけど、この話は読むたびに好きになれる気がする。
そうして、読むたびにギリシャに行ってみたくなるなあ。
しばらく村上作品を読み直す日々になりそうです。あんまり何冊も続けて読むと「あちら側」に行ってしまいそうになるのが困った点だけれど。