めがねばし小
「めがね橋」(岩手県遠野市)
ジョバンニやカムパネルラが、空とぶ鉄道に乗って、夜空を飛んでいくのが目に見えるよう。めがね型のアーチの中にキロリと光る猫目が見えるよう。

========================
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」
ジョバンニが云いました。
「僕わからない。」
カムパネルラがぼんやり云いました。

「わたしたちはもうなんにもかなしいことないのです。
わたしたちはこんないいとこを旅して、
じき神さまのとこへ行きます。
そこならもうほんとうに明るくて匂がよくて
立派な人たちでいっぱいです。
そしてわたしたちの代りにボートへ乗れた人たちは、
きっとみんな助けられて、
心配して待っているめいめいのお父さんやお母さんや
自分のお家へやら行くのです。
さあ、もうじきですから
元気を出しておもしろくうたって行きましょう。」

(「銀河鉄道の夜」より)
========================
今日もじいっと家の中。だんだんと曜日や時間の感覚がなくなってくるのが分かる。淡々とするべきことはして、あとは食べて、寝る。人間としてよりも、動物的な部分が研ぎ澄まされてくる。
ひっそりと考えて、なんとなく、岩手に旅をしたときの思い出の写真や、絵を描いて、載せてみることにしました。「イーハトーボ」というのは賢治作品の中の岩手県のことです。
岩手には2度行きました。最初は「ザグドガ森のおばけたち」という童話の挿絵を描く取材のため。作家のやえがしさんのおうちに泊めてもらって、岩手中を案内してもらいました。やえがしさんのおうちは鬼柳町というところですが、今のところまだ連絡がついていません。無事でいてくださることを切に祈るばかりです。2度目は神様カードの取材のとき。岩手中にある所謂パワースポットをたくさんまわりました。海沿いの町にもたくさん行きました。
絵を描くのはとりあえず迷惑にはならないし、1人でも喜んでくれる人がいたらいいなあ、と思います。「毎日描き続けます!」とかそんな表明では全然ないです。旅の滞在時間も短かったし、すぐ終わってしまうかも。勝手だし、自分でもなんなのかよくわかりません。

ただ、今、あの力強いエネルギーに満ちたイーハトーボのことをずっと考えています。岩手には目に見えない力強い存在にもたくさん守られているように思います。
どんな事があっても
雨にも
風にも
負けないような。

この絵は「メガネ橋」。JR釜石線の前進である岩手軽便鉄道時代の橋。童話「銀河鉄道の夜」のモチーフになったとされています。本当にメガネみたいな感じで、どこかファンタジックで、賢治の世界の中に急に迷い込んだみたいな気分になった。車の中から見た瞬間に「やえがしさん!!車止めてください!!」と興奮して鼻息荒くして、わざわざ駐車していただいて、近くまで行ったのでした。
DSCF8073
実際は夕方だったから、ちょっと暗かった。

空気も、人も、食べ物もぜんぶ、大好きだった岩手県。美しい景色、雄大な自然、海の幸に山の幸、人々の笑顔。
そんな岩手の素晴らしきものたちが一日でも早く、取り戻されるように、願いを込めて。