危ない、って思ったんだよね。

分かってたんだよね、最初から。

そうなるような気はしてたんだよ。

引っ越して部屋は広くなったけれど 台所は前より縮小して

どこに大切な君たちを置いたらいいか 分からなかった。

ただそれだけなんだよ。

僕には悪気なんて、これっぽっちもなかったんだ。

ちょっと不安定だなって思ったよ、確かに。

でも、ちょっとの間だから、大丈夫かと思ったんだ。
出会いは、運命だったね。

去年の11月 パリに行ったときに念願の蚤の市で
君たちを見つけたときの話を書いたのを昨日のことのように思い出す。


僕はあの時 君たちを見つけて 本当に幸せだった。
僕が探していたのは君たちだったんだって 思ったんだ。

スカイブルーの君と
純白に艶やかに花を咲かせた君
僕の部屋にやってきた 性格は違うけれどまるで双子のようだった君たち。

カフェオレだけじゃなくて 白米や シリアルや うどんや スープや
そうそう、忘れちゃいけない、冬の鍋の時にも大活躍だった。
エスプレッソとミルクの代わりにしいたけや餅を入れられるのは 
君たちの本意ではなかったかもしれないけれど。

信じてくれ。
この1年にも満たない短い間
僕にとって君たちほど「ちょうどいい」存在はいなかったんだ。
これはほめ言葉だよ。

祖国を捨てて日本に来てくれて そうして僕と一緒に暮らしてくれて

本当に、ありがとう。そして、ごめん。

長く紡がれてきた君たちの物語に 僕が終止符を打ってしまったよ。

形あるものはいつか損なわれるなんて 言い訳したりしないから

ひとつだけ僕のワガママな願いを聞いて欲しい。

いつかまたどこかの国の蚤の市で 僕と出会ってくれないか。

そうしたら僕は必ず

どんなガラクタの山の中からだって

君たちを見つけてみせるから。

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