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「ボンボヤージュキミちゃん!」
ある日家に帰ったら、突然の信じられない訃報が届いていて、船で一緒だった仲間、キミちゃんが病気で宇宙に旅立ってしまったということでした。

キミちゃんは62歳で、私より30歳以上も年上だけれど、ものすごく尊敬できる女友達みたいな存在でした。あんなにかっこよくてオシャレで、大地みたいなエネルギーにあふれた女性を私は他に知らないし、船では一緒に布ぞうりを作ったり、イタリアで女性の権利のために戦うNGOと交流するツアーに参加したり、船を降りたあともおうちにお邪魔したり、私の絵を気に入ってくれて応援してくれて、いろいろな人に紹介してもらったり、私の世界を広げてくれた。今厚木の晴れ屋さんに私のグッズが置いてあったり、フェアトレードのPEOPLE TREEでカレンダーを扱って頂いたりしているのも、全部きみちゃんのおかげ。フェアトレードやエコ活動に力を入れていて、ともかく世界中を飛び回っていました。
そんなことを考えていたら、キミちゃんの娘さんから急なお電話。何かと思ったら、「母は生前デナリさんの絵が好きでした。だから葬儀に来ていただく方に配りたいしそこで交流を広げて欲しいから、何か持ってきて欲しい」と言っていた、ということでした。

旅立ったあとまで、お世話されてるよ、私。

今日はキミちゃんを送る夕べ。考えてみれば、私は親族的な関係がない「友人」の葬儀に参加するのは、これが人生で2回目だ。船で一緒に旅をしていた時に描いた絵のポストカードと、キミちゃんの似顔絵を描いてもっていって、お孫さんに「星つむぎの歌」の絵本と、あとはティカルーニャのデナリをあげたら喜んでもらえて、よかった。

今日の会はとてもキミちゃんらしい会でした。
ものすごくたくさんの人が集まっていました。

「義理の葬儀は不要、親しい方で私を肴におおいに飲んで、食べて、語ってお別れをして欲しい。しめっぽい服装も避けて。」

というのがキミちゃんの遺志。だから今日の会はみんなオシャレをしてきていた。キミちゃんは棺にも入っていなくて、にっこりと笑って目を閉じていて、艶々のお肌でものすごくキレイだった。周りには黄色い薔薇が山ほど飾られていて、「眠り姫」みたい。ウィンドベルが鳴り響いて、みんなで黄色い薔薇を周りに並べて、かかってるのは、コンパイセグンドのラテンな音楽。お経もあげなくて、その代わりに一人一人が話しかけた。更に参列者に配られたのはフェアトレードのカタログ、そしてオーガニックコットンのハンドタオル。さすが。笑 会食も無農薬で美味しいお惣菜や手作りのお菓子がいっぱい机に並んで、みんな笑顔でキミちゃんの話をして盛り上がって、そしてその中央では赤ワインとパン、チーズを傍らに眠っているキミちゃん。

何から何までかっこよすぎる・・・!!
と思っていたら「でしょ☆」とウインクしているキミちゃんが天井のあたりにいる気がすごくした。だから私も「かっこよすぎて、ずるいよ!」と返事をしてみました。

いつでも自分のことよりも周りの人のことを考えてくれてました。
誰よりも優しくて厳しくて、パワフルでした。
キミちゃんはいつか「私はこれまで全力で生きてやりたいことは全てやってきたし、いろいろな人と知り合ってきた。だから、これからは私が知っている人同士をつなげて、輪を広げていけるようなハブみたいな人間になりたい」って言ってたね。多分その夢はとっくにかなってたよ。今日の会がそれが既に実現してたことの証拠だったよ。

そんな風にお世話になった恩返しもまだ何も出来ていないのに。体調を崩したみたいだ、ということを年末に聞いて、連絡をしよう、と思っていたのに家が近所だったこともあっていつでも会えるような気がしてしまって、私はそれをしなかったし、今そのことをとても後悔している。

「いつか」はない。「そのうち」もない。
「やろうと思ってた」もない。
「いま」やらなかったら、それは何もしてないのと全く一緒。

生き物はいつかみんな旅立つ。
どんなに大切な人も、大好きな家族も、かけがえのない仲間も、自分自身も。
終わりじゃないとか、来世で会えるとか、言ったってそれはまた違う自分としてであるのだから、別れがつらく悲しいことに変わりはない。でも、あの世があるかとか天国があるかとか、そんなことは実はどっちでもよくて、確かなのはその空間に旅立つ人と残された人の「祈り」と「想い」があるということ。それは、確実に、そこにあるということ。そして肉体がなくなっても、その祈りや想いは残っていくということ。人はこの世を去るときに、その去り方で、一番多くの教えを後に残せるという気がする。私も、そんな風に去りたいと思う。

今日のお通夜、悲しかったけど、すごく楽しかったんです。
変な話ですが。全然形式も格式もなくて、自由で、陽気な音楽が流れて花に囲まれて美味しいものがたくさんあって。そして、みんなが笑顔で泣いてた。
こんな会が出来るのはキミちゃんだけだ。やっぱり、憧れだ。

ありがとう。キミちゃんに出会えて私は本当に良かった。

もっと元気でいて欲しかったけれど、また一緒に旅をしたかったけれど、キミちゃんが残してくれたものは言葉では表しきれないし、ちゃんと伝えていけるように、私も頑張るので、新しい次元で待っててください。そちらでもパワフルで大口あけてガハハと笑うキミちゃんでいてください。

ボンボヤージュ!良い旅を。